【用途別】オフィス・店舗(飲食店/物販)の原状回復、特有の注意点と費用感

原状回復工事と一言でいっても、その内容と費用は物件の「用途」によって全く異なります。オフィス、物販店、そして飲食店では、求められる工事内容や注意すべき点が大きく変わるため、自社のビジネスに合わせた知識を持つことが、適正なコスト管理とトラブル回避の鍵となります。
「オフィスの大量の配線はどうすれば?」 「物販店のこだわった内装はどこまで戻す?」 「飲食店の厨房設備の撤去費用はどれくらい?」
この記事では、こうした用途ごとの具体的な疑問に答えるため、「オフィス」「物販店」「飲食店」の3つのケースに分け、それぞれに特有の原状回復のポイント、費用を左右する要因、そして注意点を詳しく解説します。
目次
ケース1:オフィスの原状回復

オフィス移転で最も一般的な原状回復工事です。一見シンプルに見えますが、ITインフラやセキュリティに関する特有のポイントが存在します。
オフィス特有の注意点
- OAフロア・配線
入居時に設置したOAフロア(配線を床下に収納する二重床)は、契約書に特約がなければ撤去が必要です。床下に張り巡らされた大量のLANケーブルや電源コードの撤去も、大きな作業となります。 - 間仕切り壁
会議室や役員室を作るために設置した間仕切り壁は、C工事(借主が業者を選べる工事)で解体するのが一般的です。消防法に基づき増設した火災報知器やスプリンクラーも、連動して撤去・原状復旧が必要になります。 - セキュリティ設備
入退室管理システムや監視カメラなど、独自に設置したセキュリティ設備の撤去と、それに伴う壁や天井の補修も忘れてはならないポイントです。
費用を左右する要因
- 坪単価
オフィスの原状回復費用は、坪単価2万円〜10万円が目安ですが、内装のグレードや工事の難易度によって大きく変動します。 - 工事の規模
間仕切りの数や、電気工事の複雑さが費用に直結します。 - ビルのルール
工事可能な時間帯が夜間や休日に限定されるビルでは、人件費が割増になり、全体の費用が上昇します。
ケース2:物販店(アパレル・雑貨など)の原状回復

ブランドイメージを反映したこだわりの内装が多い物販店では、その「デザイン性」が原状回復工事のポイントになります。
物販店特有の注意点
- 造作物・什器
商品を陳列するために作られた特注の棚、カウンター、フィッティングルームなどの造作物は、すべて解体・撤去の対象です。これらの処分費用も考慮しておく必要があります。 - 照明・音響設備
ブランドの世界観を演出するためのスポットライトや特殊な照明、音響設備の撤去と、それに伴う電気工事が発生します。 - 床・壁の特殊な仕上げ
大理石や無垢材、特殊な塗装など、こだわりの内装仕上げは、すべて標準的な仕様に戻す必要があります。解体・撤去が難しい素材の場合、費用が高額になる傾向があります。 - 看板(サイン)
ファサードに設置した大型の看板や、ウィンドウサインの撤去も借主の義務です。高所作業車が必要になる場合は、別途費用がかかります。
費用を左右する要因
- 坪単価
坪単価3万円〜15万円が目安となりますが、内装の作り込み具合に大きく依存します。 - 造作物の量と素材
解体・処分する造作物の量が多ければ多いほど、費用はかさみます。 - 内装材
標準仕様から大きくかけ離れた高級・特殊な素材を使用している場合、解体と復旧の費用が高くなります。
ケース3:飲食店(レストラン・カフェなど)の原状回復

飲食店は、すべての用途の中で最も原状回復工事が複雑で、費用も高額になります。特に、厨房設備とそれに付随する設備の取り扱いが最大のポイントです。
飲食店特有の注意点
- 厨房設備と排気ダクト
重量のある厨房機器の撤去・処分はもちろん、最も重要なのが排気ダクトやフード、グリストラップ(油水分離阻集器)の清掃です。長年蓄積した油汚れを専門的な技術で完全に除去しないと、悪臭や火災の原因となり、貸主から厳しい指摘を受けます。見た目の清掃だけでなく、「内部の油汚れを完全に除去した」という証明が求められるケースも少なくありません。 - 給排水・ガス設備
厨房内に張り巡らされた給排水管やガス管は、専門の資格を持つ業者による適切な閉栓・撤去作業が必須です。これを怠ると、漏水やガス漏れといった重大な事故につながります。 - 防水工
厨房の床に施工した防水層の撤去・復旧も、費用がかさむポイントです。 - 臭いと汚れ
客席の壁や天井に染み付いた料理の臭いや油汚れは、通常のクリーニングや塗装だけでは落ちない場合があります。消臭作業や下地からの交換が必要になることもあります。
費用を左右する要因
- 坪単価: 軽飲食店(カフェなど)で坪単価5万円〜、重飲食店(焼肉、中華など)では坪単価10万円〜50万円以上になることもあり、用途によって費用が大きく異なります。
- 厨房設備の規模: 厨房が広く、設備が多ければ多いほど、撤去・清掃・処分費用は増大します。
- ダクトの長さと清掃レベル: 排気ダクトが長く複雑なほど、清掃費用は高くなります。貸主が求める清掃レベルによっても費用は変動します。
まとめ:用途ごとの特性を理解し、専門家と計画を
用途 | 主な工事内容 | 費用を左右するポイント |
---|---|---|
オフィス | 間仕切り撤去、大量の配線処理 | 間仕切りの数、ビルのグレード・ルール |
物販店 | 造作什器の解体、特殊内装の復旧 | 造作物の量、内装材の特殊性 |
飲食店 | 厨房設備の撤去、ダクト・グリストラップの徹底清掃 | 厨房の規模、油汚れの度合い |
このように、原状回復工事は、物件をどのように使っていたかによって、注意すべき点も費用も全く異なります。特に飲食店の場合は、専門的な知識と技術が不可欠です。
退去が決まったら、できるだけ早い段階で自社の物件の特性を理解し、その用途の工事実績が豊富な専門業者に相談することが、トラブルを防ぎ、コストを最適化するための最も確実な方法です。
用途別の原状回復工事でお困りの際は、ぜひ一度SNBコーポレーションの原状回復工事サービスページよりお気軽にお問い合わせください。